9月28日は世界狂犬病デー。なぜ日本では70年近く発生ゼロで、世界では今も年間5万9,000人が亡くなるの?

9月28日は世界狂犬病デー。なぜ日本では70年近く発生ゼロで、世界では今も年間5万9,000人が亡くなるの?

10-20代向け
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この記事のポイント

  • 日本に狂犬病がないのはなぜ? 世界では年間5万9,000人が亡くなり40%が子どもという病気の仕組みと、1950年の法律制定から7年で撲滅に成功した日本の話をひもとく

日本で最後に狂犬病が出たのは、約70年前のこと。でも今日(9月27日)も、世界では160人以上が狂犬病で亡くなっている——なぜ?

  • 狂犬病は発症したらほぼ100%死亡する感染症で、治療法はありません
  • 世界では年間5万9,000人が亡くなり、そのうち40%が15歳未満の子どもです
  • 日本は1950年の法律制定からわずか7年で国内での発生をゼロにしました
  • 9月28日の世界狂犬病デーは、ワクチン開発者ルイ・パスツールの命日に由来します
  • 海外で犬に噛まれたら「すぐ石けんで洗い、現地の病院へ」が命を守る鉄則です

1957年を最後に国内発生ゼロ——日本が70年近く安全でいられた理由

日本で「狂犬病」という言葉を聞く機会は、ほとんどないよね。

実は日本で最後に狂犬病が確認されたのは1957年(昭和32年)のこと。以来、70年近く国内での発生がない「清浄国」として世界に知られています。

でも1950年代の初めは全然違いました。1950年(昭和25年)には年間900件近い発生が確認されていたんです。それがなぜ、わずか7年でゼロになったのでしょうか。

答えは3つの対策がきちんとかみ合ったからです。

まず「狂犬病予防法」の制定(1950年)。この法律で、犬を飼うときに必ず役所に登録し、毎年ワクチンを打つことが義務付けられました。さらに野良犬の管理も強化されたんです。

クラスで風邪が流行るとき、感染した人が登校し続けると連鎖が止まらなくなるよね。狂犬病も同じで、感染した犬を「早期発見→ワクチン接種→管理」の流れで抑え込むことで、連鎖を断ち切ることに成功しました。

この成功体験は今も世界から注目されています。WHOが掲げる「2030年までに犬による狂犬病ゼロ」目標のモデルケースのひとつになっているほどです。なぜ世界はまだ追いつけていないのか——次はその現実を見ていきましょう。

今も毎日160人以上——世界の現実がこんなに違う理由

日本が70年近くゼロを続けているのとは対照的に、世界では今も毎日160人以上が狂犬病で亡くなっています。

WHOのデータによると、年間の死者数は約5万9,000人。驚くのはその内訳で、死者の40%が15歳未満の子どもです。中学生と同じ年代が多く含まれています。

なぜ子どもが多いのでしょうか。理由は2つあります。ひとつは犬と遊ぶ機会が多く噛まれやすいこと。もうひとつは「傷が大きくないから大丈夫だろう」と放置しやすいことです。

地域別では、アジアで年間3万5,000人、アフリカで年間2万1,000人が亡くなっていて、合わせると全体の94%以上がこの2地域に集中しています。

なぜアジア・アフリカに偏るのでしょうか。主な理由は2つ。野良犬の多さと、ワクチンへのアクセスのしづらさです。感染後に打つ「曝露後予防」ワクチンは1コース数万円かかることもあり、経済的に受けられないケースが後を絶ちません。

日本と世界でこれだけ差がある背景には、医療インフラだけでなくウイルス自体の仕組みも関係しています。次はその仕組みを見ていきます。

発症したらなぜ助からないの?脳に向かうウイルスの仕組み

「ほぼ100%死亡」という言葉は衝撃的に聞こえるよね。でもそうなる理由には、ウイルスの動き方が関係しています。

狂犬病ウイルスは噛まれた傷口から体に入ったあと、神経に沿って脳に向かってゆっくり進んでいきます。その速さは1日に約3センチ。腕を噛まれた場合、ウイルスが脳に届くまでに数週間〜数か月かかることもあります。

この「脳に到達するまでの時間」が、実はギリギリ助かるチャンスです。噛まれた直後に傷を徹底的に洗い流し、病院でワクチンを打つ「曝露後予防」をすれば、発症を防ぐことができます。

問題は、ウイルスが脳に到達して発症したあとは手の施しようがない点です。世界の記録では、発症後に生還した人はほとんどいません。

だから「噛まれたかも」と思った瞬間にすぐ動くことが、命を守る唯一の手段。この事実が、世界狂犬病デーの啓発活動の核心でもあります。記念日そのものの由来も、実はひとりの研究者の命がけの挑戦から生まれています。

9月28日はパスツールの命日だった——記念日の意外な由来

9月28日が「世界狂犬病デー」に選ばれたのには、理由があります。

1895年の9月28日、フランスの細菌学者ルイ・パスツールが亡くなりました。パスツールといえば、牛乳の殺菌処理「パスチャライゼーション」の発明で有名ですが、実は1885年に世界初の狂犬病ワクチンを開発した人でもあります。

パスツールのワクチンが初めて使われたのは、当時9歳の少年、ジョセフ・マイスターでした。狂犬病にかかった犬に14箇所噛まれたマイスターに、パスツールは実験段階のワクチンを投与。マイスターは無事に回復し、近代ワクチン医学の扉が開きました。

2006年に「Global Alliance for Rabies Control(狂犬病制御のための世界連合)」が設立され、パスツールの命日にちなんで9月28日を「世界狂犬病デー」と定めました。2007年から135か国以上でイベントや啓発活動が続いています。

歴史を知ったら、次は自分に置き換えて考えてみましょう。海外旅行で動物に噛まれたら、どう動けばよいのでしょうか。

海外旅行で犬に噛まれたら——今すぐ覚えておきたい対処法

「アジアやアフリカが危ない」と聞くと、海外旅行での不安が出てくるよね。実際、日本人が海外で感染動物に噛まれるケースは毎年起きています。2006年と2020年には、海外で感染して帰国後に発症・死亡した事例も報告されています。

もし旅行中に犬や野生動物に噛まれたら、次の3つを覚えておいてください。

まず、すぐ傷口を石けんと水で15分以上しっかり洗い流すことです。ウイルスはまだ傷の表面にいる可能性があります。時間を惜しまず洗うことが最初の防衛線になります。

次に、現地の医療機関で曝露後予防のワクチンを接種してもらいます。早く打つほど効果が高いです。「大きな傷じゃないから」と迷う必要はありません。

帰国後も、現地での接種状況を医師に伝えて、継続接種が必要かどうか確認しましょう。

「噛まれたかも」と感じた瞬間から動くこと——これが世界狂犬病デーが毎年伝えようとしているメッセージです。では、日常生活でよくある疑問に答えていきます。

FAQ:狂犬病について中学生が気になること

Q. うちの犬にも毎年ワクチンが必要なの?

必要です。日本では狂犬病予防法という法律で、すべての犬に毎年1回の狂犬病ワクチン接種が義務付けられています。「家の中でしか飼っていないから大丈夫」と思いがちですが、これは法律上の義務です。日本の清浄状態を守るための重要な仕組みでもあります。

Q. 猫やハムスターも狂犬病をうつすの?

狂犬病は犬だけでなく、猫、コウモリ、アライグマ、キツネなど多くの哺乳類が感染します。室内飼いのハムスターが感染するリスクはかなり低いですが、海外旅行先での野生動物との接触が特に危険です。

Q. 日本で犬に噛まれたらどうすれば?

日本国内の犬に噛まれた場合、狂犬病の感染リスクは現時点ではほぼゼロです。ただし傷の手当てと破傷風リスクがあるため、医療機関への受診はしておいたほうがよいです。

Q. 狂犬病ワクチンを旅行前に打てるの?

打てます。感染リスクのある地域に渡航する前に「曝露前予防」として接種できます。費用は1コース数万円かかるため、旅行前に医療機関へ相談してください。

Q. 2030年には狂犬病はなくなるの?

WHOは2030年までに犬による人への狂犬病ゼロを目指す「Zero by 30」を掲げています。ただしワクチン普及・野良犬対策・医療インフラ整備が必要で、簡単ではありません。日本の成功モデルが世界に広がることへの期待が高まっています。

Q. 狂犬病にかかった動物はどう見分けるの?

感染した動物には「凶暴型」と「麻痺型」の2種類の症状があります。凶暴型は異常に攻撃的になり、麻痺型はぐったりして動かなくなります。野生動物が自ら人に近づいてきたら、それ自体が異常なサインなので距離を置くことが最善策です。

日本の7年間の取り組みが、今の世界に示せること

「ほぼ100%死亡」なのに、正しい対策で70年近くゼロを続けられた——これが日本の狂犬病根絶の事実です。

1950年に法律を作り、登録・ワクチン・野良犬管理の3つを7年かけて徹底した。それだけで国内から病気をなくすことができました。

世界ではまだ年間5万9,000人が亡くなっています。でもWHOの「Zero by 30」目標が示すように、この問題は解決できないわけではありません。

9月28日の世界狂犬病デーは、「知らなかったから死ぬ」病気をなくすためのキャンペーンです。日本に住んでいると実感しにくいですが、正しい知識とワクチンの普及が、今日も世界のどこかで命を救っています。

なぜ流行っているのか?

世界狂犬病デー(9月28日)の前日である9月27日にトレンド入りしたと考えられる。日本では1957年から国内発生ゼロを続けているため狂犬病は「過去の病気」と認識されやすいが、WHO統計では年間5万9,000人が死亡しており、うち40%が15歳未満の子ども。アジア・アフリカに94%以上が集中し、野良犬の多さとワクチンアクセス格差が主因。ルイ・パスツールの命日(1895年9月28日)に由来する記念日として2007年から135か国以上で啓発活動が行われており、SNS上での認知拡大が毎年この時期のトレンドにつながっていると分析される。

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この記事の根拠

一次ソース 1件エビデンス 2件参考資料 2件

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・日本の狂犬病最終確認: 1957年(昭和32年)— 厚生労働省および東京都保健医療局の公式記録に基づく。・WHO年間死者数5万9,000人(別統計では3万5,000〜5万人とのばらつきあり、本稿はWHO日本協会掲載値を採用)。・アジア3万5,000人・アフリカ2万1,000人の地域別数値はWHO公表データ。・死者の40%が15歳未満: WHOおよびGlobal Alliance for Rabies Control(GARC)の報告に基づく。・パスツールのワクチン初投与: 1885年7月6日、患者ジョセフ・マイスター(9歳)— 歴史的記録として広く認知。・世界狂犬病デー設立: 2006年、GARCによりパスツール命日(9月28日)に制定。

出典・参考リンク