なぜ7月になるとうな重が売れるの? 江戸時代の天才・平賀源内が書いた貼り紙1枚が260年後の日本を動かしている理由
この記事のポイント
- なんで夏になると土用の丑の日にうな重を食べるの? 平賀源内の貼り紙1枚と夏バテ対策のビタミンB1、2026年の稚魚豊漁まで全部ひもとく
目次
7月になると、スーパーや牛丼チェーンのうな重の広告が一気に増えてきます。なんで夏になるとみんなウナギを食べるんでしょう?
- 土用の丑の日は、江戸時代の発明家・平賀源内が考えたマーケティング発想が起源です
- 「丑の日に『う』のつく食べ物を食べると夏負けしない」という江戸の民間信仰が下地にありました
- ウナギ1切れ(約150g)にはビタミンB1が1日の必要量の約7〜9割含まれていて、夏バテ予防に科学的根拠があります
- 2026年は稚魚(シラスウナギ)が豊漁でキロ66万円と2010年以降最安値でしたが、店頭価格はすぐには下がりません
- ニホンウナギは2014年にIUCNの絶滅危惧種に指定されていて、完全養殖の商業化が長期的な課題です
7月に「うな重」が売れる理由は、江戸時代にあった
約260年前の江戸時代。ある夏、蒲焼き屋の主人が困っていました。「夏はウナギが売れないんだよな」というのが悩みでした。
当時のウナギは冬から春が旬でした。夏は脂が落ちてパサパサで、あまり人気がなかったんです。
そこへ頼ったのが、平賀源内という人物です。エレキテル(摩擦電気の実験装置)を発明したことで知られる、江戸時代きっての発明家でした。
源内のアイデアは意外にシンプルでした。「『本日丑の日』と書いた貼り紙を、店の前に出せばいい」
江戸には「丑の日に『う』から始まる食べ物を食べると夏負けしない」という風習がありました。源内はそこに目をつけたわけです。
貼り紙を出した蒲焼き屋は大繁盛しました。他の店も次々と真似をして、「丑の日=ウナギ」という習慣が江戸中に広まっていきました。
1枚の貼り紙が、260年後の日本の夏の食卓を変えたんです。次は、その「丑の日」の正体を見ていきましょう。
「う」のつく食べ物を食べれば夏負けしない? 江戸の健康ジンクス
「丑の日に『う』のつく食べ物を食べると夏バテしない」。この民間信仰、なんでウナギに集まったんでしょう?
江戸時代の「う」のつく食べ物といえば、うどん・梅干し・瓜(うり)が定番でした。これらは実は科学的にも理に適っています。
梅干しに含まれるクエン酸は疲労物質の代謝を助けます。瓜(きゅうりなど)は水分と電解質の補給に役立ちます。「夏に体が楽になる食べ物」を、江戸の人たちは経験則で選んでいたわけです。
ここにウナギが加わったのは、源内の貼り紙作戦があったから。「うなぎ」も「う」から始まります。そして「食べると元気が出る」という評判もすでにありました。
この組み合わせが、何百年も続く夏の習慣を生んだんです。では、ウナギには本当に夏バテ予防の根拠があるのか。次のセクションで科学的に確認していきましょう。
1切れで夏バテが防げる? ウナギに入っているスゴい栄養素
ウナギを食べると夏バテしない。これは本当に正しいんでしょうか? 答えはイエスです。
ウナギ1切れ(150グラム程度)には、ビタミンB1が入っています。その量は、1日に必要な量の7〜9割に達します。
ビタミンB1は、ごはんやパンに含まれる糖質をエネルギーに変える役割を果たします。クラスで「消化酵素」を学んだことがあれば、あの「変換する仕組み」に近いです。
これが不足するとどうなるか。食べても食べてもエネルギーに変わらなくなります。食欲が落ちる、だるい、やる気が出ない。この状態が「夏バテ」の正体のひとつです。
うな重として「ごはん(糖質)+ウナギ(ビタミンB1)」を組み合わせて食べるのは、栄養学から見ても理に適っています。さらに、ウナギにはビタミンA・D・E・B12や、DHA・EPAという脂肪酸も豊富に入っています。
江戸の人たちが選んだ食材が、現代の栄養学でも正解だったのは驚きですよね。では、2026年のウナギ価格はどうなっているんでしょうか。
2026年のウナギ事情——稚魚豊漁なのになぜ高いまま?
「うな重って、やっぱり高いよね」という現実があります。でも2026年、ウナギ業界にちょっとした変化がありました。稚魚の「シラスウナギ」が豊漁だったんです。
シラスウナギは、成魚を育てる前の段階の稚魚です。漁師が川や沿岸で捕まえて、養殖業者に売ります。
その価格が2026年漁期はキロ66万円でした。2010年以降でもっとも低い値段です。(直近のピーク時には1キロ250万円を超えることもありました)
でも、スーパーのうな重の値段はそんなに下がっていません。理由は3つあります。
まず、養殖には半年〜1年かかります。今年の稚魚が今年の夏に店頭に出ることはないんです。次に、流通・加工・小売でコストが積み重なります。そして「土用の丑の日」前後に需要が集中するため、売り手も強気な価格をつけやすいんです。
稚魚が安くなっても、食卓に届くまでに時間とお金がかかります。これが「価格がすぐに下がらない」仕組みです。ウナギが高いのは、それだけの工程があるからなんです。
次は、「ウナギ自体が減っている」という問題を見ていきましょう。
ウナギが減っている——食べ続けていいのかという本当の問い
ウナギにはもうひとつ、知っておくべきことがあります。
ニホンウナギは2014年、IUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧種(つまり、絶滅する危険性が高いとみなされた生き物のこと)に指定されています。過去50年で資源量が約半分以下に減ったとも言われています。
日本で売られているウナギの約99%は養殖です。でも、これは卵から育てる「完全養殖」ではありません。天然のシラスウナギを捕まえてきて、養殖池で育てる方法が主流です。
完全養殖の研究は近畿大学などが進めていますが、商業規模での実現にはまだ至っていません。2026年は稚魚が豊漁でしたが、長期的な見通しは楽観的とは言えません。
うな重を食べること自体が問題なわけではありません。ただ「毎年土用の丑の日に大量消費する」という現代の習慣が、資源にどう影響するかは考えてみる価値があります。
うな重と土用の丑の日についてよく聞かれる疑問
Q. 土用の丑の日はなんで「丑」なの?
十二支(ね・うし・とら……)のサイクルに由来します。江戸時代には12日ごとに丑の日が巡り、夏の土用期間中に当たる日を「土用の丑の日」と呼んでいました。「丑=牛(うし)」と混同しやすいですが、ウナギが選ばれたのは語呂合わせで「う」のつく食材に注目が集まったからです。
Q. 2026年の土用の丑の日は7月26日だったの?
はい、2026年の夏の土用の丑の日は7月26日(日曜日)の1回でした。夏土用(7月20日〜8月6日)の期間中に丑の日が1回しかない年は「一の丑」のみになります。2回ある年は「一の丑」「二の丑」とも呼ばれます。
Q. うな重とうな丼の違いは何?
器の違いです。「うな重」は漆塗りの重箱に、「うな丼」はどんぶりに盛りつけます。一般的にうな重の方が価格帯が高めで、タレが別添えになることも多いです。
Q. ウナギを食べると本当に夏バテに効くの?
科学的根拠があります。ウナギ1切れ(150g)にはビタミンB1が1日必要量の7〜9割含まれていて、糖質をエネルギーに変える働きをします。ただしビタミンB1は水溶性で体に貯めておけないため、夏場に定期的に摂ることが効果的です。
Q. ニホンウナギが絶滅危惧種って本当? 食べていいの?
2014年にIUCN(国際自然保護連合)が絶滅危惧種に指定したのは事実です。ただし「食べてはいけない」という規制ではなく、資源管理が必要というサインです。現在は水産庁が漁獲量を規制しながら流通が続いていて、完全養殖の実現が長期的な課題となっています。
Q. 完全養殖のウナギはまだ食べられないの?
商業規模での完全養殖はまだ実現していません。近畿大学などが研究を続けていますが、卵から成魚まで安定的に育てるのは技術的に難しい段階です。実現すれば稚魚の乱獲を防ぐことができ、ウナギの価格も安定しやすくなると期待されています。
Q. 平賀源内の貼り紙の話は本当?
広く知られている説ですが、直接の一次文献による確認は難しく、伝承的な要素が含まれています。ただし「丑の日に『う』のつく食べ物を食べる」という江戸時代の習慣自体は複数の史料に記録されています。源内の関与の真偽にかかわらず、江戸の商売人たちの発想がこの習慣を広めたのは間違いなさそうです。
平賀源内の貼り紙から260年——うな重が夏の定番でいられる理由
土用の丑の日の起源は、江戸時代の夏のマーケティング発想でした。でも面白いのは、その発想の根拠が科学的にも正しかったことです。
ビタミンB1が豊富なウナギを、糖質のごはんと一緒に食べる。これは現代の栄養学から見ても夏バテ対策として理に適っています。
平賀源内が貼り紙を書いた日から260年。今年2026年の7月26日も、多くの人がうな重を食べました。
稚魚豊漁で業界に変化の兆しがある一方、絶滅危惧種としての課題は続いています。「伝統」と「科学」と「おいしさ」が重なって260年を生き延びたうな重。来年の土用の丑の日にうな重を食べるとき、少しだけ平賀源内のことを思い出してみてください。
なぜ流行っているのか?
2026年7月末のSNSでうな重がトレンド入りした背景には、7月26日の土用の丑の日ピーク後も会話が継続したことと、2026年漁期のシラスウナギ豊漁ニュースがある。稚魚価格がキロ66万円と2010年以降最安値になったことで、将来的な価格変化への期待感がSNS上で話題になった。また、夏休み直前の時期と重なり、中高生が「なんで夏にウナギを食べるの?」という素朴な疑問をSNSに投稿するパターンも見られる。
この記事の根拠
一次ソース 1件エビデンス 2件参考資料 2件
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土用の丑の日(2026年:7月26日)の由来として「平賀源内が貼り紙を提案した」という説は広く知られるが、直接の一次文献による確認は難しく、伝承的な要素が含まれる。「丑の日に『う』のつく食べ物を食べる」という江戸時代の習慣自体は複数の史料に記録されている。ウナギのビタミンB1含有量(1切れ150gで1日必要量の7〜9割)については栄養学的に検証済み。2026年のシラスウナギ池入れ価格がキロ66万円という数値は日刊水産経済新聞が報じた水産庁公表データに基づく。ニホンウナギの絶滅危惧種指定(2014年IUCN)は公式記録として確認済み。