西山朋佳さんはなぜ女性初の棋士を選んだ?白玲5期から2週間の保留、「強い方と戦いたい」と年58局の悩み
この記事のポイント
- 西山朋佳さんは白玲を通算5期とり、2025年にできた新ルールで棋士の資格を得ました
- 決め手は「強い方と戦いたい、上を目指したい」という本人の気持ちでした
- いちばんの迷いは対局数で、2025年度だけで58局を戦っていました
- 日本将棋連盟が対局数の制度を検討すると聞き、前向きな判断につながりました
- 2027年4月1日にフリークラス四段となり、女流棋戦にも出続けます
目次
2026年10月26日、西山朋佳さんが棋士になる権利を使うと表明しました。2027年4月1日付で四段となり、将棋界で初めての女性棋士が生まれます。資格を得てから2週間迷った理由と、最後の決め手に注目が集まっています。
西山さんが資格を手にしたのは10月10日です。でも、その場では答えを出しませんでした。なぜ2週間も迷い、それでも棋士の道を選んだのでしょうか。
「白玲5期」で開いた新しい扉
将棋のプロには、2つの資格があります。「棋士」と「女流棋士」です。東京新聞によると、棋士に男女の決まりはありません。それでも、これまで女性の棋士は1人もいませんでした。
西山さんは1995年生まれ、大阪府出身です。2010年、14歳で奨励会(つまり、プロを目指す人の養成機関のこと)に入りました。2015年には女性最年少で三段に上がっています(ABEMA TIMES)。
三段リーグでは14勝4敗で「次点」まで迫りました。あと一歩で四段、という位置です。それでも年齢制限があり、2021年4月に退会しました。その後は女流棋士として、タイトルを次々にとっていきます。
2024年から2025年には、棋士編入試験にも挑みました。若手棋士との五番勝負です。結果は2勝3敗で、合格には届きませんでした(日本経済新聞)。
そこに新しい道ができます。2025年6月、棋士総会で新しい制度が認められました(日本将棋連盟の中継ブログ)。女流タイトル「白玲」を通算5期とると「クイーン白玲」の資格がもらえます。この資格があれば、棋士のフリークラスに入れる仕組みです。
2026年10月10日、西山さんは第6期ヒューリック杯白玲戦で防衛しました。これで通算5期です。新しい制度が使われるのは、これが初めてでした(日本経済新聞)。
では、なぜ西山さんはすぐに「なります」と言わなかったのでしょう。
すぐに答えなかった2週間
日経新聞によると、西山さんは防衛の直後、態度を保留しました。落ち着いた状態で、あらためて考えたいという理由です。考える期間は2週間で、期限は10月26日でした(日刊スポーツ)。
会見の一問一答では、迷い方も語っています(サンケイスポーツ)。権利を使う場合と使わない場合、それぞれの要素を洗い出したそうです。そして、自分はどうしたいのかを深く考えたそうです。決めたのは、約1週間たったころでした。
いちばんの心配は、対局数です。スポーツ報知によると、2025年度の対局は58局でした。内訳は女流棋戦が51局、公式戦が6局、非公式戦が1局です。
単純に計算すると、週1回以上のペースです。タイトル戦では地方への遠征もあります。研究や、将棋を広める普及の仕事もあります。
部活の大会が毎週あるのに、別のリーグにもエントリーする。棋士になるのは、そんな状態に近いんだね。迷うのも自然なことです。
では、その迷いをこえた決め手は何だったのでしょうか。
決め手は「強い方と戦いたい」
10月26日、東京・渋谷区の将棋会館で会見が開かれました。西山さんは「強い方と戦いたい。もっと上を目指す戦いをしてみたいという気持ちを大事にした」と話しています(東京新聞)。
日経新聞とサンケイスポーツによると、多くの人から温かい言葉をもらったそうです。いろいろ考えたあと、最後に残ったのがこの気持ちでした。つまり、答えの中心は本人の「上を目指したい」という思いです。
もう1つ、背中を押した材料があります。対局数の悩みについて、連盟側の動きです。スポーツ報知によると、西山さんはこう話しました。「制度を検討していただけると聞いているので、今回行使するに当たっても前向きに考える要素となりました」。
会見には片上大輔常務理事も同席しました。西山さんの状況を見ながら検討する考えです。ただ、まずはフリークラスからのスタートです。急に変えるのではなく、長い目で考えるとも話しています(スポーツ報知)。
女流棋戦をやめるわけではありません。西山さんは女流タイトル戦を「研さんの場」と呼びます。求められる限り出たいそうです(日本経済新聞)。サンケイスポーツによると、自分の役目も語りました。「女流棋界の到達点を塗り替える努力をする役割」です。
連盟の清水市代会長も歓迎しています。「将棋界の新たな可能性を示す、意義深いこと」という言葉です(ABEMA TIMES)。
では、棋士になると毎日はどう変わるのでしょうか。
年58局から、さらに増える対局
連盟の発表では、四段になる日は2027年4月1日です。棋士番号は356、師匠は伊藤博文七段です。
今は女流の4つのタイトルを持っています。白玲・清麗・女流名人・女流王将です(ABEMA TIMES)。毎日新聞によると、肩書は使い分けます。女流棋戦では「女流四冠」や「白玲」、一般の棋戦では「四段」です。
2027年4月からは、王将戦や叡王戦にも出ます。女流棋士の枠がなかった棋戦です(毎日新聞)。しかも、出たい棋戦だけを選ぶことはできません(ABEMA TIMES)。
フリークラスには、きびしい決まりもあります。名人を目指す順位戦(つまり、棋士のランクを決めるリーグ戦のこと)には出られません。10年以内に決まった成績を残せば、順位戦のC級2組に上がれます。
日刊スポーツによると、条件の例は3つです。30局以上で勝率6割5分以上を出すこと。全棋士が参加する棋戦で優勝すること。タイトル戦の挑戦者になることです。
10年で条件を満たせないと、棋士の資格はなくなります。ただし、女流棋士の資格は残ります(ABEMA TIMES)。順位戦に入れば、年10局ほど対局が増えます(毎日新聞)。
囲碁の世界では、女性が女流と一般の両方の棋戦に出ています。上野愛咲美女流名人は、年70局ほどを戦っています。それでも「負担に感じることはない」そうです(毎日新聞)。ただ将棋は、女流タイトル戦で地方へ行く回数が囲碁より多いそうです。
前例のない課題も残っています。たとえば、妊娠・出産の決まりを公式戦にも当てはめるかどうかです(スポーツ報知)。連盟の制度づくりも、ここからが本番です。
ここからは、よく出てきそうな疑問に短く答えていきます。
よくある質問
Q. 西山朋佳さんが棋士になるのはいつ?
2027年4月1日付で四段になります。日本将棋連盟が2026年10月26日に発表しました。棋士番号は356で、師匠は伊藤博文七段です。
Q. 棋士と女流棋士は何がちがうの?
棋士には男女の決まりがなく、女流棋士は女性だけの資格です。これまで女性の棋士は1人もいませんでした。西山さんは2027年4月から、両方の資格を持って戦います。
Q. 白玲5期で棋士になれる制度とは?
2025年6月の棋士総会で認められた制度です。女流タイトルの白玲を通算5期とると「クイーン白玲」の資格を得ます。その資格で、フリークラスに入れます。この制度が使われたのは西山さんが初めてです。
Q. 女流のタイトル戦にはこれからも出るの?
はい、出ます。女流棋戦では「女流四冠」や「白玲」、一般の棋戦では「四段」と肩書を使い分けます。本人は、求められる限り女流タイトル戦に出たいと話しています。
Q. フリークラスってどういう立場?
名人を目指す順位戦には出られない棋士の区分です。10年以内に決まった成績を残すと、順位戦のC級2組に上がれます。満たせないと棋士の資格はなくなりますが、女流棋士の資格は残ります。
Q. 西山さんは前にも棋士を目指していたの?
はい。奨励会で三段まで進み、2021年4月に退会しました。2024〜2025年の棋士編入試験は2勝3敗で不合格でした。今回は試験ではなく、白玲5期の実績で資格を得ています。
2週間の答えは「上を目指す」
ここまでの話を整理すると、決め手ははっきりしています。いちばんの理由は「強い方と戦いたい、上を目指したい」という本人の気持ちです。
迷いの中心は、年58局という対局数でした。そこに、連盟が制度を検討するという話が届きます。悩みが少し軽くなり、気持ちのほうが前に出たわけです。
2021年に奨励会を離れてから、約6年。編入試験で届かなかった四段に、西山さんは別の道からたどり着きます。2027年4月、女性初の棋士の対局が始まります。
なぜ流行っているのか?
話題になった理由は大きく3つあります。1つ目は「将棋界で初めての女性棋士」という、これまで一度もなかった出来事だからです。2つ目はタイミングです。10月10日に資格を得たあと、本人が2週間答えを保留したことで、期限の26日に向けて「なるのか、ならないのか」という注目が少しずつ高まりました。3つ目は、2024〜2025年の編入試験で2勝3敗と届かなかった物語の続きだからです。一度はかなわなかった目標に、別の道からたどり着く。その流れが、将棋をふだん見ない人にも伝わりやすかったんだね。
この記事の根拠
一次ソース 2件エビデンス 7件
ファクトチェック結果を確認する
会見日(2026年10月26日)、四段日付(2027年4月1日)、棋士番号356、白玲5期で得た資格による編入は日本将棋連盟の公式発表で確認しました。制度が2025年6月の棋士総会で承認されたことは連盟の中継ブログで確認しています。決断の理由(強い方と戦いたい・上を目指したい)は東京新聞・日本経済新聞・サンケイスポーツ、対局数の懸念と制度検討の発言、2025年度58局の内訳はスポーツ報知、肩書の使い分けや王将戦・叡王戦への参加、囲碁との比較は毎日新聞、フリークラスの規定は日刊スポーツとABEMA TIMESの報道で確認しました。
出典・参考リンク
- [一次ソース]西山朋佳女流四冠 フリークラス棋士編入のお知らせ(日本将棋連盟)
- [一次ソース]女性初の棋士の可能性(ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦中継ブログ/日本将棋連盟)
- [エビデンス]西山朋佳女流四冠、棋士編入の権利を行使と表明(東京新聞)
- [エビデンス]将棋史上初の女性棋士誕生へ 西山朋佳白玲「強い方と戦いたい」(日本経済新聞)
- [エビデンス]将棋界初の女性「棋士」誕生、西山朋佳女流4冠「強い方と戦いたい」「上を目指したい」(日刊スポーツ)
- [エビデンス]西山朋佳女流四冠、棋士になる上で悩んだのは対局数(スポーツ報知)
- [エビデンス]西山朋佳白玲、棋士と女流棋士の兼務で対局環境はどう変わる?(毎日新聞)
- [エビデンス]主な一問一答 棋士編入表明の西山朋佳女流四冠(サンケイスポーツ)
- [エビデンス]西山朋佳女流四冠、権利行使を表明 女性初の「棋士」誕生へ(ABEMA TIMES)