MMX打ち上げ、なぜ火星まで10か月・帰還まで5年かかるのか、2年2か月に1度の出発時期と燃料から読む

MMX打ち上げ、なぜ火星まで10か月・帰還まで5年かかるのか、2年2か月に1度の出発時期と燃料から読む

20-40代向け
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この記事のポイント

  • 2026年10月20日に打ち上げられたMMXは、火星周回軌道まで約10か月、地球帰還まで約5年かかる
  • 燃料を節約する遷移軌道、約2年2か月ごとの出発時期、火星圏での約3年の作業から理由を読む

2026年10月20日午前4時40分ごろ、JAXAは種子島宇宙センターからH3ロケット10号機で火星衛星探査機MMXを打ち上げた。探査機の重さは4480キロで、地球への帰還は2031年7月の計画だ。往復に約5年をかける航行計画の理由に関心が集まっている。

ロケットが探査機を切り離すのは、打ち上げから約1時間11分後の計画だ。それなのに、なぜMMXは火星圏まで約10か月、地球に戻るまで約5年もかかるのか。答えは、地球と火星が動き続けていることと、積める燃料に限りがあることの2つにある。

  • MMXは2027年8月に火星周回軌道に入る計画で、出発から約10か月かかる
  • 往路は燃料を最も節約できる「遷移軌道」を使い、太陽を回る楕円の道を進む
  • この道で出発できる時期は、会合周期の約2年2か月に1度しか巡ってこない
  • 火星圏には2027年から2030年まで滞在し、フォボスに2回着陸して10g以上を採る
  • 帰りも約1年かかり、試料カプセルは2031年にオーストラリアで回収する

火星まで10か月かかる遷移軌道

H3ロケット10号機の打ち上げ計画書によると、ロケットは打ち上げ約1時間11分12秒後に、MMXを「所定の火星遷移軌道」に分離する。地球を回る軌道ではなく、いきなり火星へ向かう道に送り出す計画だ。マイナビニュースによると、地球の引力から抜け出すには秒速約11.2キロが必要になる。地球を回る軌道に入るだけなら、秒速約7.9キロで済む。

ただし、探査機は火星へ一直線に飛ぶわけではない。探査機はもともと、地球と一緒に太陽の周りを回っている。そこから少しだけ加速し、太陽を回る楕円の道に乗り換える。楕円の内側の端が地球の軌道に、外側の端が火星の軌道に触れるように設計する。この「ホーマン遷移軌道」は燃料が最も少なくて済む道として知られ、火星までは約9か月かかる。

MMXも同じ考え方で飛ぶ。ESA(欧州宇宙機関)が公開した計画図では、火星周回軌道への投入は2027年8月だ。2026年10月の出発から数えると、約10か月になる。JAXAのMMX公式サイトも、火星圏までの航行を「約1年」と説明している。

遠回りに見えるこの道を選ぶのは、燃料を最も節約できるからだ。では、この道はいつでも使えるのだろうか。

出発は2年2か月に1度だけ

遷移軌道には大きな条件がある。探査機が火星の軌道に着いたとき、そこに火星がいなければならない。地球と火星は違う速さで太陽を回るので、出発に向く配置はたまにしか来ない。

その間隔を決めるのが会合周期だ。国立天文台暦計算室によると、火星の会合周期は約780日、およそ2年2か月になる。少ない燃料で火星へ向かえる時期も、この間隔でしか巡ってこない。

MMXの日程にも、この制約がはっきり表れている。共同通信によると、火星と地球の位置関係などから、打ち上げは2026年10〜11月が望ましいとされた。打ち上げ計画書は予備期間を11月7日までとし、打ち上げ時刻も日ごとに決めるとしていた。マイナビニュースは、今回の打ち上げには時刻の幅がなく、決めた瞬間に打ち上げる必要があると伝えた。

過去の延期も、この間隔に沿っている。2017年のマイナビニュースの記事では、当初の計画は2024年9月の打ち上げだった。時事通信によると、2023年3月のH3ロケット1号機の失敗を受け、打ち上げは2年延期された。延期の幅が1年ではなく2年になった点は、約2年2か月ごとの周期と合っている。

出発の時期が決まれば、到着の時期もほぼ決まる。では、もっと速く飛ぶことはできないのか。

速く飛べない理由は燃料の重さ

速く着くには、より強く加速すればよい。しかし、その分だけ燃料が要る。火星に着いたら、今度は減速して火星を回る軌道に入る必要もある。速く飛ぶほど、ブレーキに使う燃料も増える。

MMXの打ち上げ時の重さは4480キロだ。三菱電機によると、そのうち半分以上は燃料(推薬)だという。軌道の工夫で燃料を減らす設計も重ねた。探査機は往路・探査・復路の3つのモジュールでできている。往路モジュールは火星付近に着くまでに燃料を使い切り、切り離される。

推進方式の選び方も日程に関わる。2017年のマイナビニュースの記事によると、MMXは化学推進を採用した。電気推進は燃料が少なくて済むが、約5年で帰ってくるには時間がかかりすぎるという判断だった。

片道約10か月という日程は、燃料を抑える遠回りの道と、5年で往復するための化学推進を組み合わせた結果だ。では、火星圏に着いてからの約3年は何に使うのか。

火星圏の3年で2回着陸

MMX公式サイトによると、火星圏での滞在は2027年から2030年までだ。探査機はまずフォボスの周りを回る「擬周回軌道」に入り、近くから詳しく観測する。ESAの計画図では、フォボスを回り始めるのは2027年9月だ。

着陸の前には、時間をかけた準備がある。ESAによると、探査機はまずフォボスを調べ、着陸地点と試料を採る場所を探す。フランスのCNESとドイツのDLRが開発した探査車IDEFIXも降ろす。CNESによると、探査車の活動期間は100日だ。

そのうえで探査機はフォボスの2か所に着陸し、10g以上の試料を採る。ESAの計画図では、着陸と採取は2030年だ。もう1つの衛星ダイモスも観測する。

火星の衛星から試料を持ち帰るのは、世界で初めての試みになる。フォボスの砂を選んだ理由は、MMXがフォボスの砂を持ち帰る理由と起源の2説で整理している。滞在の約3年は、観測から着陸までの段取りを順に進めるための時間だ。

滞在を終えると、いよいよ地球へ戻る旅が始まる。

帰還は2031年7月の計画

MMX公式サイトによると、探査機は2030年に火星圏を離れ、約1年かけて地球の近くに戻る。マイナビニュースの2017年の記事は、復路も往路とほぼ同じ時間と距離を飛ぶ必要があると説明している。帰り道でも、惑星の配置に合わせて遷移軌道をたどるためだ。

帰りに使うのは復路モジュールだ。ESAの計画図では、帰り道でダイモスと火星のそばを通り、観測も行う。地球の近くでは試料入りカプセルを切り離し、オーストラリアのウーメラ立入制限区域に着地させる。共同通信によると、地球への帰還は2031年7月の計画だ。

往路の約1年弱、滞在の約3年、復路の約1年を足すと、ほぼ5年になる。打ち上げ計画書も、MMXのミッション期間を「5年」と記している。

MMXの航行計画をめぐる疑問

Q. MMXはいつ火星に着くのか?

火星周回軌道への投入は2027年8月の計画だ。ESAの計画図では、翌月の2027年9月からフォボスの周りを回り始める。打ち上げから数えると、火星周回軌道までは約10か月になる。

Q. MMXの探査機はどんな構成なのか?

往路・探査・復路の3つのモジュールでできている。打ち上げ時の重さは4480キロで、着陸用の脚が4本ある。役目を終えたモジュールから切り離し、最後は復路モジュールが試料を地球へ運ぶ。

Q. 打ち上げから探査機の分離まで何分かかるのか?

打ち上げ計画書では、打ち上げ約1時間11分12秒後にMMXを分離する。第2段エンジンは2回燃え、2回目は約1時間3分57秒後に始まる。火星遷移軌道への投入なので、打ち上げ日によって飛行計画の秒時が変わる。

Q. MMXの打ち上げはなぜ2024年から延びたのか?

2023年3月のH3ロケット1号機の打ち上げ失敗が影響した。時事通信によると、内閣府の宇宙政策委員会は同年12月、打ち上げを2年延期して2026年とする工程表の改定案を了承した。当初は2024年の打ち上げ、2029年の地球帰還を想定していた。

Q. 持ち帰った試料はどこで回収するのか?

オーストラリアで回収する。復路モジュールが地球の近くで試料入りカプセルを切り離す。ESAの計画図では、カプセルはウーメラ立入制限区域に着地する。

Q. 2030年まで火星圏で何をするのか?

まずフォボスを近くから観測し、着陸地点と試料を採る場所を探す。探査車IDEFIXを降ろした後、2030年にフォボスの2か所に着陸し、10g以上の試料を採る。ダイモスの観測も予定している。

5年を決めた惑星の配置と燃料

MMXが火星圏まで約10か月、帰還まで約5年かかるのは、好きな道を好きな時に飛べないからだ。燃料の少ない遷移軌道は、地球と火星の配置がそろう約2年2か月に1度しか使えない。しかも探査機の半分以上は燃料で、速さより節約を優先する必要がある。火星圏の約3年は、世界初のフォボス試料回収に向けた観測と着陸に充てる。次の大きな節目は、2027年8月の火星周回軌道への投入だ。

なぜ流行っているのか?

MMXが話題になったのは、未明の打ち上げを多くの人がリアルタイムで見守ったためだ。打ち上げは午前4時40分ごろで、SNSでは「ロケットが見えた」「フェアリング分離」など、飛行の節目を追う声が多い。今回はH3ロケットにとって初めての探査機打ち上げでもあった。成否への関心の高さが、検索や投稿の多さにつながったと考えられる。加えてMMXは、火星の衛星から試料を持ち帰る世界初の計画だ。帰還が2031年と先の話であるため、なぜそこまで時間がかかるのかという素朴な疑問も生まれやすい。打ち上げの瞬間を見た興奮と、長い旅への疑問が同時に広がった点が、今回のトレンドの特徴だ。

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この記事の根拠

一次ソース 3件エビデンス 7件参考資料 4件

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打ち上げ(2026年10月20日午前4時40分ごろ・種子島・H3ロケット10号機)は共同通信とNHKの報道で確認した。分離の成否は執筆時点で確認できていないため、分離時刻は打ち上げ計画書の予定値(約1時間11分12秒後・火星遷移軌道)として記載した。ミッション期間5年・打ち上げ質量4480キロ・3モジュール構成はJAXAの打ち上げ計画書、火星圏到着約1年・滞在2027〜2030年・復路約1年はMMX公式サイト、2027年8月の火星周回軌道投入・2027年9月のフォボス周回開始・2030年の着陸と採取・ウーメラでの回収はESAの計画図、2031年7月の帰還は共同通信とマイナビニュースで確認した。会合周期約780日は国立天文台暦計算室、10〜11月が望ましいとの説明は共同通信、2年延期はH3ロケット1号機の失敗による点は時事通信、燃料が半分以上を占める点は三菱電機、化学推進の採用理由は2017年のマイナビニュースによる。

出典・参考リンク