なぜ2026年8月に台風が3つ同時に? ドルフィン・クジラ・チャンホンに隠れたアジア14カ国命名の仕組み
この記事のポイント
- なぜ台風に名前があるの? 2026年8月に3つ同時発生したドルフィン・クジラ・チャンホン
- アジア14カ国が140個リストから順番に命名する仕組みをひもとく
目次
8月5日の朝、天気予報アプリを開いた人はびっくりしたかもしれない。地図の上に、台風のマークが3つ並んでいた。
「台風13号(ドルフィン)」「台風14号(クジラ)」「台風15号(チャンホン)」。この3つが同時に太平洋上を動いている。こんな光景はあまり見ない。
- 台風13号ドルフィンは「大型で非常に強い」最高クラスで、最大瞬間風速は60メートルを超える予想
- ドルフィン(香港提案)・クジラ(日本提案)・チャンホン(ラオス提案)は命名リストの74・75・76番の連番
- 台風の名前はアジア14カ国・地域が10個ずつ提案した140個のリストを発生順に使う仕組み
- 2026年は1〜7月だけで13個の台風が発生し、平年(7.9個)の約1.6倍のペース
- お盆(8〜16日頃)にかけて複数の台風が日本に接近するおそれがある
8月5日、3つの台風が同時に来た
8月5日の朝、天気予報アプリを開いた人はびっくりしたかもしれない。地図の上に、台風のマークが3つ並んでいた。
「台風13号(ドルフィン)」「台風14号(クジラ)」「台風15号(チャンホン)」。この3つが同時に太平洋上を動いている。こんな光景はあまり見ない。
なかでも注意が必要なのが、台風13号「ドルフィン」だ。気象庁によると「大型で非常に強い」という最高クラスの区分がついている。最大瞬間風速は60メートルを超える予想だ。60m/sというのは、人が立っていられなくなる目安の43m/sより約4割も大きい。7〜8日頃には沖縄本島に直撃するおそれがある、と発表されている。
台風14号「クジラ」はフィリピン方面へ向かっていて、日本への直接の影響は小さい見込みだ。台風15号「チャンホン」は8月5日に発生したばかりで、10日頃には日本の東の海上へ進む予想だ。
ところで、「ドルフィン」「クジラ」「チャンホン」という名前、誰がつけたんだろう?これが実は、かなり面白い仕組みになっている。
台風の名前は誰が、どうやってつけているの?
日本では台風に「1号」「2号」と番号をつけているけど、世界では別に「アジア名」がある。
このアジア名の制度が始まったのは2000年のことだ。それ以前は女性の名前などが使われていたけど、「地域の文化を反映した名前に変えよう」という流れで新しいルールができた。
仕組みはこうだ。北西太平洋や南シナ海に台風が発生する地域の14カ国・地域が、それぞれ10個ずつ名前を提案する。合計140個のリストを作り、台風が発生した順に1番から順番につける。
この14カ国というのは、カンボジア・中国・北朝鮮・香港・日本・ラオス・マカオ・マレーシア・ミクロネシア・フィリピン・韓国・タイ・アメリカ・ベトナムだ。日本も14カ国の1つとしてリストに入っている。
名前をつけるための条件がある。アルファベットで9文字以内で、発音しやすく、他の言語でおかしな意味にならないこと。特定の個人や企業の名前は使えない。これらをクリアした名前だけが登録される。
140個を使い切ったら、また1番に戻って繰り返す。2000年から25年以上経っているので、もう何周もしている。次は、今回の3つの台風名がどこから来ているか見ていこう。
ドルフィン・クジラ・チャンホンの正体
今回のトリプル台風の名前を1つずつ見ていくと、面白いことがわかる。実はこの3つ、命名リストの中で「74番・75番・76番」と連番なんだ。3つが同時に台風になったから、連番がそのままズラッと並んだわけだ。
ドルフィン(74番)=香港のシロイルカ
「ドルフィン(Dolphin)」を提案したのは香港だ。香港の海域に生息するシロイルカ(白いるか)がモチーフになっている。英語で「イルカ」のことだけど、香港では昔からシロイルカが地域を象徴する動物として親しまれている。
クジラ(75番)=日本が提案した星座の名前
「クジラ」を提案したのは日本だ。「くじら座(ケタス)」という星座の名前から来ている。日本が提案した10個の名前は全部、星座の名前だ。コイヌ・コト・カジキ・コグマ・クジラ・トカゲ・ヤマネコ・トケイ・トモ・ヘビなど、なじみのある星座が並んでいる。「誰の利益にもならない中立的な名前として星座を選んだ」と気象庁は説明している。
チャンホン(76番)=ラオスの木の名前
「チャンホン(Chan-hom)」を提案したのはラオスだ。ラオスで香木(香りのよい木)として知られる樹木の名前で、日本語でいうとビャクダンに近い木のことだ。
この3つが並んだのは偶然だ。リストの順番どおりに台風が発生したら、たまたま連番の3つが同時に台風になった。
2026年は台風の発生数が平年の約1.6倍
今年の台風は数がかなり多い。日本気象協会のデータによると、2026年は1〜7月の7カ月で13個の台風が発生した。平年の同じ時期の目安は7.9個だから、約1.6倍のペースだ。
8月以降も「4〜7個の台風が発生し、そのうち3〜6個が日本に接近する」と予測されている。特にお盆(8月9〜16日頃)は台風が重なりやすい時期だと、気象予報士も注意を呼びかけている。
なぜこんなに多いのか。原因の1つは太平洋高気圧の動きだ。高気圧の張り出しが変わりやすいと、台風が沖縄だけでなく、九州・本州・北日本まで広い範囲に影響しやすくなる。
もう1つは台風の動きが遅くなりやすいこと。上空の風が弱い状態が続くと、台風が同じ地域にとどまり、大雨や暴風の影響が長引くリスクが高まる。2026年は、その両方が重なっている年だと分析されている。
お盆に台風が来る前にやっておくこと
台風の接近が分かったら、72〜48時間前が「準備を始めるタイミング」だ。
まず確認するのは気象庁の公式サイト(jma.go.jp)か、各天気予報サービスの台風進路図だ。テレビのニュースも役に立つ。台風の進路は数日前から予測されているので、早めにチェックしよう。
移動や旅行の予定がある人は、飛行機・新幹線の運行状況を早めに確認しよう。暴風圏に入る前に運休になることが多い。台風の接近日とお盆の旅行日が重なりそうなら、1日早める選択も考えてみてほしい。
自宅では、ベランダの鉢植えや自転車を室内に移動するか固定する、停電に備えてモバイルバッテリーを充電しておく、飲料水を確保する、といった準備が基本だ。
台風の進路は数日で大きく変わる。2026年8月5日時点の情報はあくまで予想なので、最新情報を随時確認することが大切だ。
台風の名前についてよくある疑問
Q. 台風の名前が「引退」することってあるの?
はい、あります。甚大な被害をもたらした台風の名前は、台風委員会の加盟国からの要請で「引退」し、以後使えなくなります。例えば2013年に死者・行方不明者7,000人超の被害を出したフィリピン台風「ハイエン」は、引退後に「バイルー」という名前に置き換えられました。被災した国の人々の心情への配慮と、情報の混乱を防ぐためです。
Q. 日本が提案した台風の名前は全部で何個あるの?
10個あります。コイヌ・コト・ヘビ・カジキ・コグマ・クジラ・トカゲ・ヤマネコ・トケイ・トモの10個で、すべて星座の名前です。「クジラ」は今回の台風14号として登場しましたね。
Q. 3つの台風が同時に来る「トリプル台風」ってよくあるの?
夏から秋にかけての台風シーズンには起こりえますが、頻繁に見る光景ではありません。2026年8月5日のように3つが同時に記録されることは、「台風が多い年」に起きやすいです。今年は1〜7月で平年の約1.6倍のペースで発生しているので、必然的にこういう事態になりやすくなっています。
Q. 台風の進路は、どうやって予測しているの?
気象庁や各国の気象機関が、気象衛星・海洋ブイ・ゾンデ(気球に乗せた観測機器)のデータをスーパーコンピュータに入力して計算しています。同じデータをもとに複数のシミュレーションモデルを走らせて、その結果をまとめたのが進路予想円です。遠くなるほど誤差が大きくなるので、5日以降の予想は幅が広くなります。
Q. これからの台風は、もっと強くなっていくの?
世界的な気温の上昇と海面水温の上昇により、台風が急激に強まりやすくなっていると多くの気象研究者が指摘しています。発生数が大幅に増えるかどうかは研究者間でも議論があります。ただ、発生した台風が非常に強い勢力を保ちやすくなっているのは確かで、台風1つ1つへの備えがより重要になっています。
Q. 台風に番号とアジア名の両方があるのはなぜ?
日本の気象庁は国内向けに「台風○号」という番号を使い続けています。番号は日本での発生順なので分かりやすい一方、アジア名は国際的に共通で使える名前です。同じ台風を異なる国が異なる番号で呼ぶと混乱するため、国際間のやりとりではアジア名が使われています。
台風の名前は「14カ国の持ち寄り文化」だった
台風の名前は、誰かが気まぐれにつけているわけじゃない。カンボジアから始まる14カ国・地域が順番に提案した140個のリストを、台風の発生順に使っていく。2000年から続くアジア全体の「持ち寄り文化」だ。
今回のドルフィン・クジラ・チャンホンは、リストの74〜76番の連番だ。偶然その3つが同時に台風になったから、3つまとめてトレンド入りした。名前の背景を知ると、天気予報を見るのが少し違って感じてくる。台風情報は毎日更新されるので、お盆の計画がある人はこまめにチェックしてほしい。
なぜ流行っているのか?
2026年8月5日に台風13号ドルフィン・14号クジラ・15号チャンホンの「トリプル台風」が同時存在したことがトレンドの直接の要因。チャンホンという聞きなれない名前への検索需要と、お盆直前という時期が重なり、台風の命名制度・進路予測・防災情報の複合的な関心が急上昇を招いた。2026年は1〜7月で13個発生(平年7.9個)と過去ペースを大幅に上回っており、台風への関心が例年より高い状況も下支えしている。
この記事の根拠
一次ソース 2件エビデンス 1件参考資料 2件
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台風13号「ドルフィン」の最大瞬間風速60m/s、7〜8日頃の沖縄接近予想は気象庁・tenki.jp(2026年8月5日付記事)から確認。アジア名制度(2000年開始)・14カ国140個リスト・日本が提案した10個の星座名・「引退制度」(ハイエン→バイルー)は気象庁公式ページおよびWikipediaの台風の名前の項目から確認。2026年1〜7月で13個発生(平年7.9個)は日本気象協会(2026年7月31日付予報記事)から確認。74・75・76番の連番は気象庁の命名リストから確認。