UFOそっくりの「吊るし雲」がGWの山梨の空でじっと動かなかった——その正体と天気が崩れるサインのしくみ
この記事のポイント
- なぜGWの山梨の空に、UFOそっくりのレンズ型の雲がじっと動かずに浮かんでいたの? 吊るし雲の正体は「山岳波」という現象で、止まって見えるのに実は消えては生まれ続けている
- 千葉では28.5m/sの強風が吹いた日のできごとだった
目次
2026年5月4日のこと。山梨の空に、UFOそっくりの雲が現れました。丸くて平たい形で、しかもほとんど動かない。そんな写真がXに投稿されると、一気に広がりました。
- 吊るし雲は、山の風下にできる「レンズ雲」の一種です。
- 止まっているように見えるけど、実は同じ場所で発生と消滅を繰り返しています。
- 強い風が山を越えるときに起きる「山岳波(さんがくは)」が原因です。
- 吊るし雲が出た日、千葉市では最大瞬間風速28.5m/sを記録していました。
- 吊るし雲は「上空に強い風が吹いているサイン」で、天気の崩れを予測するヒントになります。
GWの山梨の空にUFO型の雲が出現
2026年5月4日のゴールデンウィーク。山梨県の上空に、丸くて平たいUFOのような雲が浮かびました。見た目はほとんど動かず、空に貼り付けたみたいに静止しています。
こんな写真がXに投稿されると、「これ本物の雲?」「不気味すぎ」という反応が広がりました。ウェザーニュースアプリにも全国からのリポートが届いていました。その雲の正体は「吊るし雲(つるしぐも)」です。UFOそっくりの形の理由、一緒に見ていきましょう。
次のセクションでは、「なぜ動かないのか」というその正体に迫ります。
止まって見えるのに、実は消えては生まれている
吊るし雲の最大の謎は「なぜ動かないのか」です。普通の雲は風に流されていきます。でも吊るし雲は、まるで空に固定されているように見えます。
実は、雲が「同じ場所で生まれ、同じ場所で消える」を繰り返しているんです。蛇口から水が流れても「水が流れる形」は変わらない——あの感じに似ています。上空の風が常に同じ経路を通るので、雲ができる場所も変わらない。だから「止まって見える」わけです。
ではなぜ、同じ場所で雲ができ続けるのか。その答えは「山岳波」という現象にあります。
山岳波——見えない波が雲を生み出す
吊るし雲の核心は「山岳波(さんがくは)」という現象です。聞き慣れない言葉ですが、しくみはシンプルです。
川に石があると、石の後ろで水が波打ちますよね。山に当たった風も、同じように波打ちます。山を越えた空気は「上昇→下降」を繰り返します。
上昇する部分では空気が冷やされ、水蒸気(すいじょうき=空気中の目に見えない水)が雲になります。下降すると温まって雲が消えます。この繰り返しが、あの「静止した雲」を生み出します。
富士山のような高い山ほど山岳波が強くなります。だから富士山周辺では吊るし雲がよく出るんです。では、吊るし雲が出るとき、地上ではどんな天気になっているのでしょうか。
吊るし雲が出た日、千葉で28.5m/sの強風
吊るし雲が出るとき、上空では強い風が吹いています。2026年5月4日、山梨に吊るし雲が出た日。千葉市では最大瞬間風速28.5m/sを記録しました。まっすぐ立っているのが難しいほどの強さです。
気象予報士はこの雲を見て「上空の風が強い、天気が変わりやすい」と判断します。昔から「吊るし雲が出たら嵐に備えよ」という経験則(けいけんそく)があるほど、天気を読む手がかりとして使われてきました。吊るし雲が空にあるときは、その後の強風・荒天に備えておくのが賢明です。
実は富士山では、こうした吊るし雲が特別な形で記録されています。次はその話です。
富士山周辺に20種以上の吊るし雲が記録されている
富士山の周辺は、吊るし雲の宝庫です。観測によると、富士山では20種類以上の吊るし雲が確認されています。
形によって「笠雲(かさぐも)」「レンズ雲」「つるし雲」と呼び分けることもあります。笠雲は山頂に直接かかる雲、吊るし雲は少し離れた風下に浮かぶ雲です。
富士山の笠雲は古くから「帽子をかぶったら雨」という観天望気(かんてんぼうき=雲や風で天気を読む方法)として知られています。吊るし雲も、その仲間のひとつです。
次のセクションでは、よくある疑問にまとめてお答えします。
吊るし雲についてよくある疑問
Q. 吊るし雲はどこに行けば見られるの?
富士山周辺(山梨・静岡)が一番観察しやすい場所です。八ヶ岳・立山連峰などの高い山でも出ます。低気圧が接近して上空の風が強まったときに発生しやすいので、天気予報もチェックしてみてください。
Q. 吊るし雲は何時間くらい続くの?
山岳波が続く限り、数時間〜半日ほど同じ場所に見え続けます。上空の風向きや強さが変わると消えます。
Q. 吊るし雲が出たら、必ず嵐になるの?
必ずではありません。でも、上空に強い風が吹いているサインであることは確かです。特に低気圧が接近しているときに出やすいので、天気予報と組み合わせて判断するのがおすすめです。
Q. 飛行機のパイロットは吊るし雲を気にするの?
はい、かなり気にします。山岳波の近くでは「マウンテン・ウェーブ・タービュランス(山岳乱気流)」が起きます。吊るし雲はその位置を示すサインでもあるので、航空気象では重要な指標です。
Q. 普通の雲と吊るし雲は、何が一番違うの?
普通の積雲や巻雲は風に流されて動きます。でも吊るし雲は「同じ場所で生まれては消え、また生まれる」を繰り返すので、動かないように見えます。これが吊るし雲の最大の特徴です。
Q. スマホで撮るときのコツは?
形が丸くはっきりしているので、青空をバックに広角で撮ると迫力が出ます。山を画角に入れると文脈が出ます。出現後2〜3時間以内が、最も形がくっきりしている時間帯です。
謎の雲が教えてくれた空の読み方
吊るし雲の正体は、山岳波が作り出した「動かない雲」でした。止まっているように見えて、実は絶えず生まれては消えている。あのUFO型の形は、見えない強風のサインです。
もしGWの空にUFO型の雲が浮かんでいたら「山の向こうで風がすごいことになっているかも」と思い出してください。写真を撮りながら、そのあとの天気の変化にも気を配っておきましょう。
なぜ流行っているのか?
2026年5月4日のGW、低気圧が発達しながら日本海から東北に接近したことで、全国的に上空の風が強まりました。その影響で山梨県上空では山岳波が励起されて吊るし雲が発生しました。同日、千葉市では最大瞬間風速28.5m/sという強風が観測されており、広い範囲で上空の風が強い状況が続いていました。吊るし雲の写真がX(旧Twitter)に投稿されると、UFOそっくりの外見が話題を呼び、複数の投稿がリポストされて拡散しました。ウェザーニュースアプリにもユーザーからのリポートが多数届いており、視覚的なインパクトと「止まっているのになぜ?」という科学的な疑問の両面が、拡散を後押しした構造になっています。
この記事の根拠
一次ソース 1件エビデンス 1件参考資料 2件
ファクトチェック結果を確認する
tenki.jpおよびウェザーニュースの2026年5月4日付記事にて、山梨県での吊るし雲発生を確認しました。千葉市での最大瞬間風速28.5m/sはウェザーニュース記事に記載があります。山岳波のメカニズムについては、気象予報士向け解説サイト(yohoushi.jp)およびWikipediaのレンズ雲記事と照合し、複数の情報源で一致を確認しました。富士山周辺での20種以上の吊るし雲という情報は、気象関連Webサイトと照合しています。