うるう秒はなぜ2027年5月20日に廃止されるのか、2035年の期限を8年早めた理由と負のうるう秒の危険

うるう秒はなぜ2027年5月20日に廃止されるのか、2035年の期限を8年早めた理由と負のうるう秒の危険

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この記事のポイント

  • 国際度量衡総会が2026年10月にうるう秒の廃止を決議
  • 2027年5月20日から時刻のずれを最大1時間まで許す
  • 通信障害の防止と、前例のない負のうるう秒の回避が前倒しの理由だ

2026年10月15日、フランスで開かれた国際度量衡総会がうるう秒の廃止を決めた。1972年から27回続いた1秒の調整は、2027年5月20日で終わる。通信や情報システムの障害を防ぐ狙いが挙げられている。

時計に1秒足すだけの仕組みが、なぜ廃止されることになったのか。そして、2022年に決めた「2035年までに」という期限を、なぜ8年も早めたのだろうか。

  • 国際度量衡総会は2026年10月15日、うるう秒の廃止を決議した
  • 2027年5月20日から、時刻のずれを最大1時間まで認める
  • うるう秒は、コンピューターや通信の障害を招いてきた
  • 地球の自転が速まり、前例のない「負のうるう秒」が迫っていた
  • 負のうるう秒の確率は、2035年までに30%と見積もられた

27回続いた1秒の帳尻合わせ

世界の時刻の基準は「協定世界時(UTC)」と呼ばれる。UTCは原子時計で刻まれ、1秒の長さはとても正確だ。一方、地球の自転の速さは一定ではなく、少しずつ揺らいでいる。

だから放っておくと、原子時計の時刻と太陽の動きがずれていく。このずれが0.9秒を超えないように、6月末か12月末に1秒を足してきた。これがうるう秒である。

うるう秒は1972年に始まり、これまで27回入った(朝日新聞、ITmedia NEWS)。直近は2017年1月1日で、日本では「8時59分60秒」という時刻が入った。この日は、ふだんより1秒長い1日になった。

足すのはたった1秒だ。それなのに、この1秒が世界中のシステムを悩ませてきた。

1秒がシステムを止める理由

コンピューターは、1分が60秒で終わることを前提に動くものが多い。そこに「60秒」という見慣れない時刻が入ると、時刻が重なったように扱われる。その結果、誤作動や停止が起きるおそれがある(産経新聞、ITmedia NEWS経由)。

実際に、2012年7月1日のうるう秒では障害が相次いだ。国内のインターネット接続事業者でサーバーが止まった。オーストラリアでは航空機の搭乗手続きに支障が出て、多くの便が遅れた。

決議の前文も、この危険を理由に挙げている。交通、エネルギー、通信、宇宙などのインフラは、途切れない時刻を必要とする。さらにIoTやスマートグリッドが広がり、うるう秒による誤作動の危険は高まっているという。

ここまでは、昔からある「1秒を足す」問題だ。今回の決定を急がせたのは、まだ誰も経験していない「1秒を引く」問題だった。

2035年を待たなかったわけ

地球の自転は、近年速まっている(日本経済新聞、朝日新聞)。自転が速くなると、太陽の時刻が原子時計より先に進む。すると、1秒を足すのではなく、1秒を引く「負のうるう秒」が必要になる。

負のうるう秒は、1972年からの歴史で一度も行われていない。決議の前文は、インフラに異常や障害を起こす危険が高いと指摘する。2025年3月の専門家会合では、2035年までに必要になる確率を30%と見積もった。

つまり、2035年の期限を待つ間に、負のうるう秒が来るかもしれなかった。前文は、備えには2000年問題に似た規模の投資が要るとも書いている。ITU-T(国際電気通信連合の標準化部門)や、時刻同期の規格IEEE 1588の関係者などからも、前倒しを求める声が出ていた。

もう1つの理由は、時刻の基準がばらばらになることへの心配だ。事業者ごとにうるう秒の扱い方が違い、時刻の食い違いが起きていた。このままでは、UTCをやめてGPSなどの衛星の時刻に乗り換える利用者が出かねない。それでは国際基準の意味が薄れてしまう。

では、うるう秒をやめた後の時刻は、どう決まるのか。

1時間まで許す連続UTC

新しい決まりは、決議で「連続UTC」と呼ばれている(国際度量衡局、決議5)。原子時計の時刻と地球の自転による時刻のずれを、最大3600秒、つまり1時間まで認める。始まるのは2027年5月20日だ。

ずれは少しずつしか広がらない。そのため、少なくとも数世紀は時刻を調整しなくて済む見通しだ。報道では、この仕組みを「うるう時」や「うるう時間」と呼んでいる。

決議は、国際度量衡局に次のような役割も求めた。国際天文学連合や国際地球回転・基準系事業(IERS)と協力し、決定を広めることだ。あわせて、ずれの推移を見守り、定期的に報告する。

連続UTCで、1秒の足し引きという作業はなくなる。ここからは、読者が気になりそうな点を問答の形で整理する。

うるう秒廃止のよくある疑問

Q. うるう秒とは何か?

原子時計の時刻と地球の自転による時刻のずれを埋めるため、1秒を足す調整のことだ。ずれが0.9秒を超えないよう、6月末か12月末に入れてきた。1972年の導入以来27回行われ、直近は2017年1月1日だった。

Q. うるう時(うるう時間)とは何か?

うるう秒の代わりに、ずれを最大1時間まで認める新しい決まりを報道がそう呼んでいる。国際度量衡総会の決議では「連続UTC」と呼ばれ、2027年5月20日から始まる。ずれが1時間に届くのは数世紀先とされる。

Q. うるう秒の廃止でスマホやパソコンの時計は変わるのか?

普段目にする時刻の表示がすぐに変わるわけではない。変わるのは、2027年5月20日以降は1秒を足す調整が行われなくなる点だ。日本では情報通信研究機構(NICT)が、うるう秒に合わせて日本標準時を調整してきた。

Q. 太陽の動きと時計がずれても困らないのか?

ずれは少しずつしか広がらず、1時間に届くまで数世紀かかる見通しだ。決議は国際度量衡局に、ずれの推移を見守り定期的に報告するよう求めている。日々の暮らしで違いを感じることはまずない。

Q. うるう秒の廃止はいつから議論されていたのか?

2022年の第27回国際度量衡総会で、2035年までに廃止する方針が決まっていた。2026年の総会では、許容するずれの上限と実施日を決めた。それ以前から、国際電気通信連合でも存廃が議論されてきた。

Q. 日本はうるう秒の廃止に賛成していたのか?

賛成していた。2015年の世界無線通信会議(WRC-15)では、日本や中国、韓国、米国、フランスなどが廃止を支持した。一方で英国やロシアなどは反対し、結論は先送りされた経緯がある。

Q. 秒の定義そのものも変わるのか?

変わる方向で議論が進んでいる。原子時計の代わりに、より精度の高い光時計を使う新定義が検討されている。候補には東京大学の香取秀俊教授が考えた光格子時計がある。2030年の次回総会で提案できるよう準備が続く。

自転より止まらない時計を選んだ

うるう秒の廃止は、太陽との1秒のずれより、止まらない時計を選んだ決断だ。うるう秒は50年余りで27回入り、そのたびに障害の心配がつきまとった。

決め手は、地球の自転が速まったことだ。前例のない負のうるう秒が、2035年までに30%の確率で来るとされた。だから総会は期限を8年早め、2027年5月20日に決めた。

ずれを1時間まで許せば、数世紀は調整がいらない。秒の定義も、2030年に向けて光時計を使う形への見直しが進む。時刻の決まりは、地球よりも機械の都合に合わせる方向へ動いている。

なぜ流行っているのか?

うるう秒の廃止が注目を集めたのは、身近な「時刻」の決まりが変わる珍しい出来事だからだ。1秒を足す仕組みは知られていても、なぜ廃止されるのかは直感的に分かりにくい。その意外さが関心を呼んだ。タイミングも大きい。2022年に「2035年までに廃止」と決めたことは報じられていたが、今回は実施日が2027年5月20日と具体的に示された。日本経済新聞、朝日新聞、産経新聞、時事通信が一斉に報じ、ニュースサイトにも広く転載された。さらに、地球の自転が速まっているという話題性が加わった。「1秒を引く」という前例のない事態は、2000年問題を思い出させる。システム障害への不安と、地球規模の自然現象への好奇心が重なり、検索が増えたと考えられる。

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この記事の根拠

一次ソース 1件エビデンス 4件参考資料 2件

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出来事は国際度量衡局(BIPM)の第28回国際度量衡総会決議5の本文で確認した(連続UTCの発効日2027年5月20日、|UT1-UTC|の上限3600秒、負のうるう秒の危険・2035年までの確率30%・2000年問題級の投資・IoT等のリスク・GNSS時刻への乗り換え懸念は同決議前文)。決議日10月15日、27回の実施、0.9秒の基準、2012年の障害事例、2022年の2035年方針、2030年の秒の再定義と光格子時計は産経新聞(ITmedia NEWS転載)、朝日新聞、日本経済新聞、時事通信で確認した。2017年1月1日のうるう秒挿入とWRC-15での各国の立場はINTERNET Watch(2016年11月)で確認した。実施日を5月20日とした個別の理由は出典で確認できなかったため書いていない。

出典・参考リンク