なぜネコは15歳になると80%が腎臓病になるの? 25年の研究が生んだAIM薬「フェリエイム」の正体とは
この記事のポイント
- 15歳超えのネコの80%が腎臓病になる理由は体内のAIMタンパク質にあった
- 2026年4月に農水省へ承認申請した「フェリエイム」のしくみと治験の結果をひもとく
目次
ネコを飼っていたら、一度は聞いたことがあるはずです。「うちの子、腎臓が悪くて——」。なぜネコはこんなに腎臓病になりやすいのか。その答えが、25年の研究からついに出てきました。
- 15歳以上のネコの約80〜81%が慢性腎臓病(CKD)にかかる
- 原因は、ネコが先天的に「AIM」というタンパク質をうまく使えないから
- 2026年4月24日、新薬「フェリエイム(FeliAIM)」が農林水産省に承認申請された
- 治験では末期に近いネコの360日生存率が「劇的に改善」。5年以上生きた例も報告
- 開発者は東京大学出身の宮崎徹さん。研究開始から約25年かけた成果
ネコと腎臓病、知っておきたい80%という数字
日本には今、約1,000万頭のペットネコがいます。その多くが、いつか腎臓病を経験します。
15歳を超えたネコを調べると、約80〜81%が慢性腎臓病(CKD、つまり腎臓の機能がじわじわ落ちる病気)にかかっています。クラスに30人いたら24〜25人が同じ状況になる計算です。
腎臓病が末期(ステージ4)まで進むと、平均余命はわずか103日。長年一緒に暮らした猫が、そこまで追い詰められてしまう——これがこれまでの現実でした。
なぜこんなに多くのネコが腎臓病になるのか。その理由が、体の中にある「AIM」というタンパク質にあります。
「AIM」って何? 体のゴミ掃除係の役割
「AIM(エイム)」というタンパク質があります。正式名称は「Apoptosis Inhibitor of Macrophage(アポトーシス・インヒビター・オブ・マクロファージ)」。難しいですが、一言で言えば「体内のゴミ掃除を手伝う係」です。
ヒトやマウスでは、AIMは普段「IgM(アイジーエム)」という抗体にくっついて血液を流れています。腎臓に死んだ細胞(ゴミ)がたまると、AIMはIgMから離れます。そしてゴミに「ここにある」と目印をつけます。すると掃除担当の「マクロファージ(免疫細胞のこと)」がやってきて処理します。
「掃除当番に、ここ汚れてるよ!と知らせる係」のイメージです。
問題は、ネコにはこの「離れる」ステップができないことです。
なぜネコだけAIMが機能しないの?
ネコのAIMは「IgMにものすごく強くくっついていて、なかなか離れない」という特性があります。
離れられないAIMは、腎臓のゴミに目印をつけられません。死んだ細胞が腎臓の細管(尿を作る細い管のこと)に詰まり続け、腎機能が少しずつ落ちていきます。この特性はライオンやトラなど、ネコ科全体に共通しています。
この仕組みを解明したのが、東京大学の宮崎徹さんです。2016年に科学誌「Nature Medicine」へ論文を発表しました。研究を始めてから約10年かかった成果です。
「離れないなら、外からAIMを補えばいい」。そのアイデアが次の一手になります。
フェリエイムってどう効くの? 治験で見えたこと
解決策のアイデアはシンプルです。機能するAIMを注射で体に補う、ということです。これがフェリエイム(FeliAIM)の基本的な考え方です。
宮崎さんはAIM医学研究所を設立し、薬の開発を進めました。2025年5月から、全国26か所の動物病院でネコへの治験が行われました。
結果は予想を超えるものでした。末期に近いステージ3bのネコで「360日後の生存率が劇的に改善」されました。5年以上生き続けた例も報告されています。末期近くなら平均103日だった余命が、大きく伸びる可能性が示されたわけです。
2026年4月、農水省に申請が出た
治験が終わり、2026年4月24日に農林水産省へ「動物用医薬品」としての承認申請が正式に提出されました。
販売名は「FeliAIM(フェリエイム)」。2026年2月22日に決定した正式な名前です。審査には数か月〜1年ほどかかります。順調に進めば2026年内、遅くとも2027年春ごろに動物病院で処方できる見通しです。
研究開始から約25年かけて、ここまで来ました。
なぜ今SNSでトレンドになっているの?
「承認申請が出た」という具体的な進展が、一気に広まりました。
ネコを飼う家庭は日本の約14%。「腎臓病でネコを見送った」経験を持つ飼い主は少なくありません。SNSに「これが間に合っていたら」という投稿が増え、その共感の連鎖がトレンドを生みました。
日本発・東大発の研究という点も、共感の広がりを後押ししています。
「フェリエイム」についての6つの疑問
Q. フェリエイムは今すぐ使えるの?
2026年6月現在、農林水産省が審査中です。承認が下りてから動物病院で処方できます。早ければ2026年内、遅くとも2027年春ごろが目安です。今はまだ、待つ段階です。
Q. 副作用はないの?
治験段階での重大な副作用の報告は、現時点では公表されていません。詳細は実用化後のデータ公開を待つことになります。
Q. ネコの寿命は本当に30歳まで伸びるの?
東京大学の研究ページには「ネコの寿命が15歳から30歳に延びる可能性」との言及があります。ただし、全てのネコに同じ効果が保証されるわけではなく、個体差があります。
Q. 費用はどれくらいかかるの?
実用化後に動物病院ごとの料金が設定されます。投与頻度や費用の詳細は、承認後の情報公開を待つ必要があります。
Q. ライオンやトラにも使える?
AIMが機能しないという特性はネコ科全体に共通しています。将来的な応用が期待されますが、フェリエイムは現在ペットのネコ向けに開発されています。
Q. 今の病院でネコの腎臓病に何かできることは?
定期的な血液・尿検査での早期発見が最も大切です。療法食・点滴・対症療法の薬など、現在の獣医療でできるケアも整っています。フェリエイムの実用化を待ちながら、今できることを続けることが重要です。
ネコの「宿命」が25年越しに変わろうとしている
15歳を超えると80%が腎臓病になる。末期になれば余命103日。これがネコを飼う人たちが抱えてきた、変えられないと思われていた現実でした。
タンパク質AIMの発見と「外から補う」という発想が、その現実を変えようとしています。農林水産省への承認申請は2026年4月に提出済みです。
「ネコが長く元気に生きられる日」は、もうすぐそこまで来ています。
なぜ流行っているのか?
2026年6月のYahoo!リアルタイム検索でトレンド上位入りした「ネコの腎臓病薬」は、2026年4月24日に農林水産省へ承認申請が提出されたことが直接の引き金です。治験終了というマイルストーンをメディアが報じ、ペットを飼う約14%の世帯に届きました。SNS上では腎臓病でネコを見送った経験を持つ飼い主が「これが間に合っていたら」と投稿し、共感の連鎖が拡散を加速させています。約1,000万頭のペットネコのうち15歳以上の80%が罹患するという数字は、ネコを飼う人全員の「いつか来る未来」として受け取られます。「25年かけた研究がついに動いた」という物語性と、東大発・日本発という親しみも拡散を後押しした要因です。
この記事の根拠
一次ソース 1件エビデンス 2件参考資料 2件
ファクトチェック結果を確認する
15歳以上のネコの80〜81%が慢性腎臓病(CKD)にかかるというデータは複数の獣医学情報源で確認。末期ステージ4の平均余命103日は動物病院・獣医師監修記事で一致。AIMタンパク質のネコでの機能不全は2016年宮崎徹さんのNature Medicine論文で確認。承認申請日(2026年4月24日)はITmedia・産経新聞など複数ニュースで確認。販売名「フェリエイム」(FeliAIM)は2026年2月22日決定、複数ソース一致。治験場所(全国26か所)も複数ソースで確認。360日生存率改善・5年以上生存例は2026年1月掲載の科学論文および獣医師監修記事で確認。